〇建設キャリアアップシステムを創った目的
日本全体の就業者人口が減少する中、全ての産業で担い手の確保が共通した課題となっています。
特に建設業は他産業に比べて高齢化が進んでおり、60歳以上の技能労働者が約4分の1を占め、10年後にはその大半の引退が見込まれます。これから建設業を支える29歳以下の割合も全体の約10%程度、新規入職者数はこの20年でピーク時の約半分(H7:7.8万人→H27:4.0万人)に減少するなど、若年入職者の確保・育成、担い手の確保が喫緊の課題となっています。
賃金についても建設業の現場労働者の賃金カーブのピークは製造業の生産労働者よりも早く到来する傾向があり、30代後半でピークの水準に到達していることから、現場の管理、後進の指導等のスキルが適切に評価されていない可能性があります。
また、技能者個々の能力を統一的に評価する業界横断的な仕組みがなく、技能者のスキルアップが処遇(賃金)の向上につながっていかない構造的な問題があります。
建設業が将来にわたって持続するには、建設業を支える担い手を確保・育成する必要があり、とりわけ若年層の入職を進めるには他産業と比べて建設業が生涯を通じて魅力的な職業、産業であることを目に見える形で示すことが大切で、そのためには個々の技能者が技能と経験を適正に評価され、評価に応じた適正な処遇を受けられる環境の整備が不可欠です。
建設キャリアアップシステムは、こうした目的を実現するために、技能者の本人情報等の真正性を確認した上で、一人ひとりの技能者の経験と技能に関する情報を業界統一のルールで蓄積し、適切な評価と処遇の改善、技能向上につなげ、若手入職者に将来のキャリアパスを目に見える形で示す業界共通のインフラとなるものです。全建総連も参画して国と建設関係団体一体の取り組みによって、建設キャリアアップシステムの構築に向けた官民コンソーシアム(15年8月~16年12月)、建設キャリアアップシステム運営協議会(17年6月~)と協議を重ね、18年4月より登録開始となりました。
一般財団法人建設業振興基金が建設キャリアアップシステムの運営主体として、システム開発・運営にあたりますが、システムの円滑かつ適正な運営を進めるために、行政と建設関係団体で建設キャリアアップシステム運営協議会を構成し重要な方針を決定します。
〇システムの概要
建設キャリアアップシステムでは、一人ひとりの技能者がまちがいなく本人であることを確認した上でシステムに登録し、IDが付与され、建設キャリアップカードが交付されることが最初のスタートになります。
建設キャリアップカードが本人を証明する機能を担うことになり、いつ、どの現場に、どの職種で、どの立場(職長など)で働いたのか、日々の就業実績を建設キャリアアップシステムに電子的に記録・蓄積することができます同時に、どのような資格を取得し、講習を受けたか、技能の研鑽の記録も蓄積されます。こうして蓄積された就業履歴や資格等の情報を元に、最終的には
それぞれの技能者が技能と経験を適正に評価され、評価に応じた適正な処遇を受けられる、処遇が改善される、さらには人材育成に努め優秀な技能者をかかえる事業者の施工能力が見えるようにすることを目指します。
CCUSの詳しい制度内容等については、国土交通省「CCUSポータルサイト」をご覧ください。
【CCUSポータルサイトURL】https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000033.html
〇システム利用によるメリット
(1)技能者のメリット
- 技能者の保有資格や就業履歴が業界統一のルールでシステムに蓄積されることから、十分な経験を積み、技能の向上に努める技能者が評価され、処遇改善につながることが期待されます。現在、技能者の能力評価の仕組みづくりが検討されていますが、建設キャリアアップシステムに登録した保有資格や就業履歴等の情報を活用することが検討されています。
- 技能者がいつどの現場で就労したかシステムに記録されるので、建設業退職金共済制度における証紙の貼付状況が確実かつ容易になります。また、建材や有機溶剤によって後に健康被害が起きた時や現場で事故に遭った際の就業証明として活用できます。賃金不払いなどの際には事実関係の確認が可能です。
- 技能者の保有資格や就業履歴等の情報がシステムに記録されるので、自己の経験・能力の客観的な証明や、キャリアパスとしても活用できます。建設業を一旦離れ再入職する場合にも離職以前に習得した資格・研修や現場経験の証明として活用できます。
(2)事業者のメリット
- 人材の育成に努め、優秀な技能者を抱える、高い評価を受けた事業者は、発注者や元請企業にアピールすることにより、受注機会の拡大につなげることが期待できます。現在、専門工事業者の施工能力の見える化と事業者評価の仕組みづくりが検討されていますが、建設キャリアアップシステムに登録した事業者の情報の活用が検討されています。
- 建設キャリアアップシステムに登録した事業者の情報は、登録したすべての利用者(技能者・事業者)が閲覧可能なため、事業者登録することで信用を得、優良な事業者は新規受注につながることが期待できます。
- 技能者を雇用する専門工事業者は、雇用する技能者の技能レベルを客観的に把握するとともに、自社の施工力をアピールすることが可能です。
- 現場を管理する元請企業は、システムを活用し、社会保険加入状況の確認など、現場管理の効率化、現場のコンプライアンスやトレーサビリティの確保が期待できます。
- 優秀な人材を抱える専門工事業者の選定に活用できるほか、顧客に対して施工に携わる技能者のスキルをアピールするといった活用も可能です。
- 既に独自の就労履歴システムを運用している事業者においては、建設キャリアアップシステムとの連携により、システムの拡充や合理化を図ることも可能です。
〇システムを活用した政策展開
建設キャリアアップシステムに蓄積された技能者情報や就業履歴を活用した、技能者の能力評価制度と専門工事業者の施工能力等の見える化評価制度が創られました。
技能者の能力評価制度により技能者は能力に応じた適正な処遇を事業者から受けられる。専門工事業者の施工能力等の見える化評価制度により優秀な技能者を育成・雇用する事業者が高く評価され、受注機会につながる。2つの制度によって建設業の担い手確保を実現しようとしています。
また、国土交通省は令和5年度から建退共の建設キャリアアップシステムの完全移行及びそれと連動したあらゆる工事における建設キャリアアップシステムの完 全実施を目指し、施策を講じるとしています。
- 国土交通省 建設キャリアアップシステム普及・活用に向けた官民施策パッケージ(PDF)
- 建設キャリアアップシステムを活用した技能者の処遇改善に向けた取組(PDF)
- 建設技能者の能力評価制度
- 専門工事企業の施工能力等の見える化評価制度
〇登録申請
(1)申請方法
登録の申請方法は下記の3つのいずれかとなります。
- インターネットで申請する方法
建設業振興基金の建設キャリアアップシステムのホームページより申請できます。 - 申請書を申請窓口(認定登録機関)に持参する方法
(2)申請窓口(認定登録機関)
建設業振興基金の建設キャリアアップシステムのホームページにが申請窓口リスト(認定登録機関一覧)が公表されています。なお、受付時間等が変更となる場合や予約制とする窓口があります。窓口にお越しの際は事前に窓口に連絡確認ください。
(3)登録申請書の入手方法(窓口で申請する場合)
窓口で申請する場合の登録申請書は、申請窓口(認定登録機関)で入手できます。申請窓口に申請書の入手に訪れる際は事前に連絡確認ください。
(4)登録の仕方
建設業振興基金の建設キャリアアップシステムのホームページで確認ください。