2024.05.02

解説(4)「改正建築物省エネ法・建築基準法 4号特例の縮小」

設計等の前倒し必要
代替品で変更申請の場合も

省エネ審査の手続きは2パターン

【髙橋住対部長記】この連載も最終回です。今回は、法改正に私たち地域工務店や大工さんなどの施工者がどう対応していくかを中心に解説したいと思います。

◎省エネ審査と4号特例縮小で変わる業務フロー
 「省エネ基準適合」と「4号特例の縮小」によって変る業務フローについて、新築の場合を念頭に確認したいと思います。
 2025年4月からは、建築確認申請手続きのなかで、省エネ基準の適合性審査が行われます。図にあるとおり、省エネ審査には、2つのパターンがあります。
 1つは、Webプログラム等で計算した上で、省エネ適判申請を所管行政庁か省エネ判定機関に提出し、基準適合の判定を受けて確認検査を受けるパターン。もう1つは、仕様基準のパターンで、この場合は仕様基準を満たしていることを確認申請の中で確認することになります。
 少し厄介なのが、省エネ性能の評価に関係する設備機器などの変更を含む設計変更が起きた場合です。
 1次エネルギー消費性能に関係する冷暖房設備や給湯器、照明等の計画や開口部の仕様など外皮性能等が変更になると、完了検査を受ける前に「軽微変更該当証明書」を提出することや、大きな変更の場合には「省エネ適判の再実施」が必要になる可能性もあります。
 したがって、全般的な設計業務の「前倒し」が必要です。確認申請の前に、設備も含めて設計内容を確定する必要があり、お客様との打ち合わせも「前倒し」しなくてはならないと思います。もちろん従来から設備等も確定してから確認申請をしている場合には影響は少ないと思いますが、工事中のモデルチェンジや欠品で代替品を採用することになれば「軽微変更」が必要になる場合もあり、そこに対応しておかないと完了検査が受けられません。
 また、省エネ性能に関わっては、完了検査時に必要となる工事監理報告書や施工記録、関連する設備や部材の納品書・出荷証明書、写真等のエビデンスも見直されることになります。
 現場で施工する大工さんたちも含めて、事前のシミュレーションが必要になると思いますし、断熱施工の精度をしっかり上げていくことも大切です。
 4号特例の縮小に関しても設計者の業務に大きな影響があると思います。現状では、壁量計算書や柱頭柱脚接合部の金物計算書といった構造図の作成はプレカット会社に依頼している工務店もあると思います。2025年4月からは構造図が確認申請時に必要になるので、これまでの対応が可能かプレカット会社等との調整が必要になるかもしれません。
 また、この機会に「特定工程」を指定し「中間検査」を実施する特定行政庁が増えるかもしれません。地元自治体の動きをチェックしておきましょう。

◎設計・施工者の連携が重要
 このように法改正で業務フローが変わります。そこで私が一番強調したいのは、設計者と施工者(主に大工さん)の連携がこれまで以上に大切になってくることです。今まで、木造住宅の現場ではある程度の変更は構造的な部分も、断熱性能でも、設計者の判断で検査には影響が出てこなかったものですが、これからは、それらも審査対象となり、設計図書通りのものでなければ検査に通りません。
 施工者(大工さん)からすれば、渡される設計図書が実際の施工現場と同じ内容のものになるよう図面の精度を上げてもらうことが大事になります。
 計画変更の手続きを避けるために、無理やり申請図書の通りに現場を納めるのは困難もあり、良い建物をつくることにはならないと思います。つまり、設計者(及び工事監理者)も実際の現場作業を担う施工者の意見を事前に反映した上で、設計図書を作成する努力やスキルが今まで以上に必要です。施工者の側は、事前相談にしっかり対応することで、後の変更が少なく精度が高い施工をすることが可能になるのだと思います。また、詳細はまだ示されていませんが、完了検査に必要な書類や写真が増えることになり、こうした対応には現場施工者の協力も必要不可欠になると思います。

◎リフォームが申請対象に
 前回の連載で、リフォーム・リノベ工事でも「大規模修繕・模様替えに該当すれば確認申請が必要」と解説しました。リフォーム・リノベの内容により、確認申請が必要になる場合、必要ない場合に分かれます。今後、この判断を行うスキルと提案力を持たないと、受注活動に影響が出ると思います。とくに自社に設計機能が無い場合は、パートナーとなる設計者を見つけておき、連携を確認しておくことが大切ではないでしょうか。(おわり)