2024.02.26

解説(2)「改正建築物省エネ法・建築基準法 4号特例の縮小」

省エネ性能表示へ
注文住宅分野でも推奨

改正建築物省エネ法・建築基準法の施行スケジュール

【本部髙橋住対部長記】連載の第1回では、主に省エネ基準と適合性の審査を解説しました。その中では、住宅の省エネ性能をどうやって判断しているのか、建築確認申請時に基準適合を審査することなどを解説しました。まだ読んでいな方は、機関紙「全建総連」及び「電子版」でぜひチェックしてみてください。PCやスマホで「全建総連電子版」と検索すると読むことができます。前回も触れましたが、本連載では、住宅建築の実務に携わっていない方、組合の書記・事務局の方が法改正で「何か変わるのか」を理解することを目指しています。設計・施工の実務者の方には少し物足りないかもしれません。

〇3年がかりの法改正スケジュール
 今回の法改正は非常に大きな改正で、改正される項目がとても多く、多岐にわたります。改正法が2022年6月に「公布」されて、3年間がかりで、段階的に「施行」されます。スケジュールを再確認したいと思います(図表)。
 2022年9月施行では、住宅の省エネ改修に対する住宅金融支援機構による低利融資制度の創設が行われました。続いて、昨年、2023年4月施行では、「住宅トップランナー制度の拡充」などが行われました。
 2024年4月の施行では、「建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示」と「再エネ利用促進区域制度」、「防火規制の合理化」が施行されることになっています。
 そして、法改正の最終仕上げとして2025年4月に「省エネ基準適合を義務付け」や「建築確認審査の対象となる建築物の規模の見直し」(いわゆる4号特例見直し)「二級建築士の業務独占範囲の見直し」等が施行されます。
 これが「3年がかりの法改正」の全体スケジュールです。

〇「販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」とは
 さて、4月から「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が始まります。ご存じの方も多いと思いますが、建築物の省エネ性能を表示する制度は以前から「住宅性能表示制度」がありました。今回の法改正で新しく始まるのは、「建築物の販売・賃貸を行う事業者」が新築建築物の販売・賃貸を行なう際に所定の「ラベル」によって省エネ性能を表示する制度です。評価方法は第三者評価と自己評価があります。
 ラベルに表示される項目は、建物の種類、評価方法、再エネ設備のありなしなどで異なるのですが、エネルギー消費性能や太陽光発電(自家消費)が星の数で表示され、断熱性能の等級が表示されます。また目安光熱費も任意で表示することができます。
 法律上は、あくまで「努力義務」なのですが、販売・賃貸事業者、すなわち物件の売主や貸主、サブリース事業者などが、告示に従って表示を行なっていないと認められたときは、勧告・公表・命令も行われるというものです。地域工務店でも不動産業を兼業し、分譲住宅(建売住宅)を販売したり、共同住宅の賃貸を行なっていたりする場合は、今回の改正内容に対応しなくてはなりません。また、大家さんを顧客に持つ場合には適切な情報提供が求められると思います。
 ちなみに不動産情報サイト「SUUMO」や「アットホーム」では、4月より新築住宅の省エネ性能表示を開始すると報道発表していますので、こうしたサイトに不動産情報を掲載している不動産会社は必ず対応をすすめてきます。
 この「省エネ表示」の対象は、「2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物、及びその物件が、同時期以降に再販売・再賃貸される場合」です。対象外となる建築物は、販売・賃貸する用途ではない注文住宅やウィークリーマンション、民泊施設などです。また、古いアパートなどで省エネ性能が分からない場合も「努力義務」の対象から外れますが、現在、窓や給湯機の改修など省エネ性能向上のリフォーム・リノベを行なった場合の表示方法が検討されています。省エネ改修や耐震改修による性能向上が、入居者の判断基準になっていくのは、今後のリフォーム・リノベ市場の発展にとって大切なことです。
 この制度は、建設業者が法律の義務者ではありません。あくまで販売・賃貸事業者が「省エネ表示」に取り組むことを求めています。しかし、法施行によって2つの変化が起きると私は考えています。
 1つは、分譲住宅の省エネ性能向上です。最低水準ではなく、上位等級の省エネ性能を意識したものに変わっていくでしょう。もちろん現場の施工精度も求められると思います。
 2つは、注文住宅の分野でも「表示が推奨される」ことからも、省エネ性能の表示を求めるお客様が間違いなく増えるでしょう。建売住宅の省エネ性能が表示されるわけですから、注文住宅でも当然に省エネ性能を表示していくことになると思いますし、そうするべきです。また、能登半島地震なども踏まえると、注文住宅の分野では耐震等級も重視されることになると思います。

〇再生可能エネルギー利用促進区域制度
 4月には「建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度」も開始されます。
 制度の前提は、市町村が法に基づく「促進計画」を策定することで、対象エリア、再エネ利用設備の種類、特例許可の適用を受けるための要件などを定めます。市町村が定めた要件を満たす建築物については、建ぺい率や容積率、高さ制限などを緩和できます。
 建築基準法の改正でも似たような特例の許可制度が創設されており、こちらは「構造上やむを得ない建築物」を対象としており、ターゲットが既存建築物になるわけです。
 また、「促進計画」が策定されると、建築士に再エネ設備の設置等に関する、建築主への説明義務を課すことができます。
 いずれにしても、この制度は、市町村の動き次第のところがあります。地域の環境や文化などの特性から自治体により内容は様々となっていくでしょう。その点では広域な営業エリアを持つ大手よりも特定のエリアで営業展開をしている地域工務店のほうが対応しやすいかもしれません。地元自治体の議論には皆さんも積極的に参加しましょう。再生可能エネルギー手法においても、太陽光はもとより、多様な再生可能エネルギーがより多く活用される未来に向けて、政策動向をしっかり見極めていくことが大切です。
※図表は国交省の資料を基に作成、転載しています。