2024.02.01

解説(1)「改正建築物・省エネ基準法  4号特例の審査省略等の縮小」 

最低等級が「4」に
省エネ基準適合が義務化
早めのマニュアル確認が必須

省エネ性能に係るさらなる上位等級(戸建て住宅の断熱等級6・7)の基準(評価方法)

【本部髙橋住宅対策部長記】2020年の6月、改正建築物省エネ法・建築基準法が可決・成立しました。読者の皆さんの多くが既にご存じと思いますが、法改正によって、2025年4月からすべての新築住宅・非住宅に対して、省エネ基準への適合が義務付けられます。また、主に木造2階建ての住宅(4号建築物)に適用されていた審査省略等が縮小されます。メディアで住宅業界の「2025ショック」などと取り上げられてきました。そうした記事を読むと、専門工事業の方や組合書記の方には専門的で理解できない部分も多かったように思います。そこで、機関紙「全建総連」2月1日号から4回に分けて、法改正の内容と対応について、できるだけわかりやすく、初歩的なことから解説したいと思います。第1回は、「省エネ基準と適合性の審査」について大まかに解説します。

〇住宅の省エネルギー基準と種類
 2025年の「適合義務化」について解説する前に、まずは省エネ住宅の基準・種類について解説します。
 住宅の省エネルギーの基準は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」に基づいて定められています。1980年に初めて制定された基準は法律の改正ごとに強化され、現在は、「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」の2つが住宅の省エネルギーの基本的な基準となっています。
 1つ目の基準である「外皮性能」は、建物の壁や天井、窓などの断熱性能や日射遮蔽の性能を指します。UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC(シータエーシー)値(平均日射熱取得率)という2つの指標があり、1~7の「断熱等級」に分かれています。また日本には温暖地や寒冷地があるため、地域区分が1~8まで設定されて等級が決まっています(図)。
 2025年度に適合しなければいけない基準は、等級4になります。つまり2025年4月に等級4が最低等級になるわけです。ちなみにZEHや長期優良住宅の基準は等級5以上になります。
 2つ目の基準である「一次エネルギー消費量」は、住宅で使用するエネルギーの総消費量のことで、設計した建設地や床面積(延床、主たる居室、その他の居室)などで自動的に算出される基準値と、設計で導かれた外皮断熱性能や日射熱取得率、選定した各設備の省エネ性能基準値などで算出される設計住宅のエネルギー削減量を比較して基準値より下回る事を評価することになります。
 この説明だけだと「一次エネルギー消費量計算は難しくてできそうもない」と思われるかもしれませんが、実際には複雑な一次エネルギー消費量の知識や計算はあまり必要ではありません。無料のWebプログラムが公開されているなど、設計者支援のツールが整っています。
 ここまでで省エネ基準が「外皮性能」と「1次エネルギー消費量」の2つで構成され、それぞれの基準をクリアする住宅を建築することが求められているのだと理解いただけたと思います。

〇すべての建築物が省エネ基準の適合対象に
 現行法では、300㎡未満の小規模な住宅に対しては説明義務、300㎡以上の大・中規模の住宅に対しては届出義務が課されていました。2025年4月からは、原則としてあらゆる規模の住宅に対して省エネ基準の適合義務が課されます。
 つまり、建物の大きさや種類に関係なく省エネ基準の適合が義務付けられるということなのです。こうしたことから、これまで建築士が実施してきた説明義務は不要になり、制度が廃止となります。
 また、建築物の増改築をする際には、増改築部分のみに省エネ基準適合が求められることになります。
 これまでは増改築後の建物全体が省エネ基準に適合することが求められましたが、改正後は増改築を行う部分のみが対象となることになりました。増築部分の「外皮性能」は「仕様基準」で確認することになります。

〇確認申請・審査マニュアルが発刊
 さて、それではどのように法適合が確認されるのでしょうか。2025年4月からは、建築確認手続きのなかで省エネ基準の適合性審査が行われます。この審査のために、省エネ関連の書類提出が必要になります。適合性審査では「省エネ性能確保計画」を所管行政庁か登録省エネ判定機関へ提出して、省エネ基準に適合しているか判定するなどのやり取りが必要です。ただし、仕様基準を用いた場合などは、適合性判定が省略されます。
 やっかいなのが、今回の法改正では、省エネ基準だけでなく「4号特例」の審査省略制度の縮小等も行われることから、構造関係に関する提出図書や必要壁量の計算方法も変わります。こうしたことから、法改正に対応した「確認申請・審査マニュアル」が23年11月に発刊されました。したがって、住宅の新築に携わる工務店・設計者はこの内容を早めに身に着ける必要があるのです。マニュアルは無料でダウンロードできます。
https://www.mlit.go.jp/common/001627106.pdf
 次回は、本年4月に施行となる販売・賃貸時の省エネ性能表示制度と再生可能エネルギー利用促進区域制度を中心に解説したいと思います。
(次回は、機関紙「全建総連」3月1日号に掲載予定。電子版は、2月26日配信予定です)