2020年8月28日、東京高裁は建設アスベスト訴訟神奈川2陣に対し、国及び被告アスベスト建材メーカー3社の責任を認め、賠償責任を命じる原告勝訴の判決を言い渡しました。これまでに全国で、7つの地裁判決及び5つの高裁判決が出されており、本判決は6つ目の高裁判決です。
判決では、国の責任について、警告表示(掲示)の義務付けに関する規制放置の責任などを認め、責任時期も1975(昭和50)年10月1日から2006(平成18)年8月31日まで、警告表示(掲示)の義務付けに関する規制放置の責任を認めるなどし、賠償を命じました。
さらに、東京1陣東京高裁、京都1陣大阪高裁、大阪1陣大阪高裁、九州1陣福岡高裁に引き続いて、「一人親方等」に対する国の責任も認めました。判決では、国は一人親方等についても、安衛法22条及び57条に基づく規制権限を行使すべき職務上の法的義務を負担することから、マスクの着用義務付けや警告表示義務付けを怠ったことによる一人親方等の損害も賠償すべきと判断しました。
国の責任が認められるのは、今回の判決を含めて13回連続となります。国の責任が連続して認められたことは、国の司法判断が完全に認められ、確立したといえます。一人親方等に関しても、今回の高裁判決を含め5回連続で国の責任が認められたことは、一人親方等のアスベスト被害に対しての国の責任が、もはや疑いのないところとなっていることを示したものです。
建材メーカーについては、一定の割合を占めていた3社(A&Aマテリアル、ニチアス、ノザワ)の共同不法行為責任を認め、ほぼ全ての原告についてメーカーに対する責任を認め、損害賠償を命じました。
これは、アスベストが重篤な疾患を引き起こす危険物であると知りながら、十分な警告表示すらも行わないままに石綿建材を製造・販売してきた建材メーカーの責任を断罪したものです。高裁判決で連続して被告建材メーカーの責任が断罪されたことは、企業に対する司法判断の流れが確立されつつあることを示しています。
国及び被告アスベスト建材メーカーは、今回の判決を真摯に受け止め、責任を自ら認め、すみやかに原告らに謝罪し、早期解決に踏み出すべきです。
原告及び全ての建設アスベスト被害者の「命あるうちの救済」をするためには、国と被告アスベスト建材メーカーは、裁判に頼らずとも十分な補償がされる基金制度の確立などに尽力すべきです。
全建総連は、建設アスベスト被害の根絶に努め、建設アスベスト被害原告、その家族、遺族原告と連帯し、建設アスベスト訴訟の早期解決と補償救済に向け、一層の支援・協力に全力を尽くしていくことを表明します。
2020年8月31日