11月7日、福岡地裁は、アスベストに対する国の規制に遅れがあったとして、国へ賠償責任を命じる原告勝訴の判決を言い渡しました。提訴から3年、原告をはじめ裁判を担い支援してきた九州の仲間をはじめ、ご支援いただいた各県連・組合のご協力に感謝し、全面解決に向けた今後の運動と、後に続く訴訟を共にたたかっていく決意を表明するものです。
判決は、被告国は1975(昭和50)年の特定化学物質等障害予防規則の改正以降から1995(平成7)年改正までの間、事業者に対して労働者に防じんマスクを使用させることを罰則をもって義務付けず、石綿含有建材への警告表示や建築作業現場における警告表示(掲示)の内容として、石綿により引き起こされる石綿関連疾患の具体的な内容、症状等の記載、防じんマスクを着用する必要がある旨の記載を義務付けなかったことは、著しく合理性を欠いているというべきとして、原告20人(被害者単位)に対して、国賠法1条1項の適用上違法であると認定しました。違法の時期を東京地裁判決より、5年さかのぼられせたことは、いまだ不十分とは言え、前進と言えます。
建設作業者に大きく広がっている、アスベストによる重篤な被害に対し、首都圏建設アスベスト訴訟1陣東京地裁判決や泉南アスベスト訴訟最高裁判決に続き、国の法的責任が認められたことは評価できるものです。私たちは国がこの判決を真摯に受け止め、被害者の全面救済と新たな救済制度を創設し、アスベスト対策の抜本的強化に乗り出すよう要求していきます。
しかし判決は、一人親方や零細事業主の期間が長かった原告(8人:被害者単位)全てを「安衛法」の範囲外としました。増加し続けている一人親方化による請負労働者を「労働者に該当しない」として、実態に反して労働関係法外にすることは、建設産業の実態に目を背けるだけでなく、建設従事者の労働環境を一層悪化させるものといわざるを得ません。
さらに被告企業については、被告企業ら以外の者によって各被災者の損害がもたらされたものではないことが証明されたものと認めることができない、個別の被災者が従事する建築作業現場において石綿粉じんに曝露する可能性のある状態に置かれた石綿含有建材を製造販売した企業を共同行為者として原告側において特定できないとして、共同不法行為責任は成立しないと被告企業の法的責任を棄却したことは全く不当な判断です。
「原告の生命あるうちの解決を」の願いを国、被告企業に真摯に受け止めさせ、建設アスベスト被害者の全面的、かつ早期解決に向け、裁判に頼らずとも十分な補償がなされる基金制度の確立などを強く要求します。全建総連は、訴訟原告、ご家族とも連帯し、アスベスト訴訟の早期解決へ一層の努力をしていくことを表明します。
2014年11月10日
全国建設労働組合総連合
書記長 勝野圭司